「うまれる」ことば (14/02/2012)

 

2月2日にならまちセンターでやった「うまれる」の映像を見ています。2台あったカメラの1台分ですが・・・。後々、編集してDVDにする予定。相当、おもしろいです。即興なので、本番中も長さは決まっていないし、どこで終わってもいいんですが、ある場面で、客席の女性が声を上げます。文字にするとたいしたことはないのですが、これによって、パフォーマンスは熱を帯びていきます。 

前回の日記にも書いたのですが、本番の記憶を頼りに書いたので、ちょっと思い違いもあったようです。「じぶんのこだけが、かわいいんです。」っていうのは、本番が終わってから言ってたのかなあ? 

昨年の8月6日に芦屋市立美術博物館で行った「うまれる」の初演の映像はすでに編集が終わっています。販売しようと思っています。近々宣伝しますので、よろしくお願いします。2作品とも、全く違った状況がうまれています。 

・・・ ・・・ 

(母) 
りっぱ、りっぱ。 
りっぱ、りっぱ。 ?? 
もう、お母さん・・・。 
さくまさん、ありがとう。 

(母) 
りっぱ、りっぱ。 

(母) 
終わってなかった・・・、すみません。 

(佐久間) 
今から踊りますよ。 

(母) 
まだ、これから・・・、 さくまさん、終わったんかとおもたなあ、やってください。 

(佐久間) 
踊りますよ。 

(晴美) 
イチ、ニ、サン、 

(母) 
ガンバレ。 

(晴美) 
ガンバレ。 
  
(晴美) 
おにいちゃん。 

(母) 
すみません、わたしがぶちこわしましたね。 

(佐久間) 
大丈夫です。大丈夫。 

(佐久間) 
ありがとうございます。 

(佐久間) 
おかあさん、おかあさんでしょ。 

(母) 
こんな子、産んだ覚えないけどね。 

(晴美) 
おかあさん、おかあさん。 

(佐久間) 
おかあさん、ありがとうございます。 

(母) 
さくまさん、ご苦労さまです。 
??でて、よかったね。 

(男) 
ガンバレ、ガンバレ。 

(母) 
すみません、ありがとうございます。 

(男) 
ガンバレ。 

(佐久間) 
ありがとう。 

(晴美) 
おにいちゃん。 

(母) 
すみません、ぶちこわし専門ですので・・・。 

(佐久間) 
ぶちこわれてないと思います。 

(母) 
ごめんなさい。 
もう終わるかと、終わるかと・・・。 

(佐久間) 
なにか言ってますよ。 

(母) 
はやく終わってくれたらうれしくて・・・。 

(晴美) 
おかあさん、おにいちゃん。 

(母) 
おにいちゃん、いいぞ。 
がんばろう。 

(晴美) 
おにいちゃん、おぶって。 

(母) 
これを待ってました。 

(佐久間) 
重いぞ。 

出演者;奥谷晴美、佐久間新、ジェリー・ゴードン 
母:奥谷晴美の母 僕は、一度会ったことはあったけど、途中まではわからなかった。 
男:客席の男の観客 誰かはわからないが、大きな声をかけてくれた。 

・・・ ・・・

うまれた、叫ばずに。(04/02/2012)

2月2日 
最高だった。 

楽屋で白いドレスに着替えている晴美さんを見ながら、 
今日、この場所で、この人とダンスができる奇跡を感じて、 
ジェリーさんの音とともに 
ある、 
ことだけを踊ろうと決めた。 

ほの明るい光と闇がつくる輪のはざまでたゆたうと、からだが滑りはじめた。 
きっと、もうひとつの光の輪では、晴美さんが踊っているのだろう。 

感じるままに、気ままに踊った。 

光がひとつの大きな輪になった。すこし晴美さんを探ってみると、 
ヴェールの向こうで、目がらんらんとし、ぐふふと笑っていた。 
いいですか、おにいちゃん、おどりましょう、おもいっきりやりましょう、 
って言ってるのがわかった。 

僕は、ますます気ままに踊った。 
前回とは違った。開始直後に発作が起こったあの時とは。 

四方を囲んだ下手側の客席から拍手が聞こえた。叫び声も聞こえる。どうやら晴美さんのお母さんのようだった。 
「わたしは、じぶんのこだけがかわいいんです。」「よかったよ。」「サクマさん、ありがとう。」「こんなこをわたしはうんだんですか。しんじられない。」「ぶちこわして、ごめんなさいね。」 

間欠泉のように、感情の泉が高まるたびに、お母さんは何度も登場した。 

「ありがとうございます、はるみさんのおかあさんですね、まだなんです、ここからなんです、まだまだおどるんですよ、だいじょうぶです、ありがとうおかあさん。」 

と、僕も叫んでいた。 
晴美さんを車椅子から下ろした。どんどん踊り出した。イチ、ニ、サン、シ、ゴッ、ロック、歌いながらダンスした。ぐるぐる、ひょこひょこ踊りながら、 
わたしいいでしょ、みんなみてる、いけてるでしょ、すごいでしょ、 
ダンスの渦。 

僕が飛び跳ねると、晴美さんも魂ごとジャンプして終わった。崩れ落ちた晴美さんをお姫さまだっこして、くるりくるりと回った。 
「それを待ってたんや!」「ウォー」 
ことばにならない叫びが聞こえてきた。拍手の中での退場。 

なにかがうまれたようだった。いつも毎日毎日何年も「うまれた」を叫び続けたのに、舞台では叫ばなかった。ほんとにうまれるときは、うまれたとは言わないんだろう。この日まで、想像妊娠のような状態になっていた。ほんきで狂気で、踊り狂うひと。僕は、晴美さんにあこがれ続けているのだろう。彼女と一緒に、自分の力を総動員して闘えるダンス事故。ダンスの力、ダンスの可能性。ひとの力、ひとの可能性。