だんだんたんぼに夜明かしカエル

 

演出・振付:佐久間 新
企画:一般財団法人たんぽぽの家

出演: 中川雅仁/水田篤紀/山口広子(たんぽぽの家アートセンターHANAメンバー)
是永ゆうこ/佐久間 新/佐藤拓道/古川友紀
音楽:野村誠/ほんまなほ
ゲスト出演:たんぽぽの家アートセンターHANAメンバー(兵庫公演)だじゃれ音楽研究会(東京公演) ほか

音楽:野村 誠 
照明:岩村原太/川島玲子
美術:池上恵一
IoT監修:筧 康明
衣装:清川敦子
音響:sonihouse
舞台監督:浜村修司
アドバイザー:砂連尾 理
宣伝写真:草本利枝
宣伝美術:岡田将充(OMD)
制作進行:那木萌美

 

主催:文化庁/一般財団法人たんぽぽの家
制作:一般財団法人たんぽぽの家
協賛:TOA株式会社
協力:アートアクセスあだち 音まち千住の縁「 野村誠 だじゃれ音楽祭」/社会福祉法人わたぼうしの会/奈良たんぽぽの会/ジャングルようちえん/社会福祉法人 起生会 ほほえみの園/一般社団法人北和福祉振興一道会 みんなの広場 らんまん/株式会社ジーベック/NPO法人エイブル・アート・ジャパン


フライヤーと報告書

岡田将充(OMD)

http://om-d.jp/?portfolio=だんだんたんぼに夜明かしカエル


ジャワの棚田とたんぼと /佐久間新

ジャワで舞踊を習っている時、熱病にうなされたかのようにどうしてもジャワの人たちのことが分からなくなることがあった。 ダンスの振りに始まりは無く、終わりだけがあるとか。音楽の裏拍だと思っていたものが、表も裏も無く両表だったとか。先生にアポイントとって会いにいくのが失礼で直接行った方がいいとか。価値観が反対だったり、違ったりすることがたくさんあった。ジャワ舞踊は、テクニックだけがうまくなっても仕方がない。ジャワの考え方、暮らし方、付き合い方を知らなければ意味がない、とよく言われた。舞踊がうまくなるにはとにかく真似るしかない。ジャワ人になりたいともがいていた。

帰国後、都会には住めないと、大阪と京都の境にある山間に暮らすことにした。家の倉庫を改造して無理やり住んだ我が家の周辺は、700メートル弱の山に囲まれたクレーターのような盆地になっていて、西の谷、東の谷といった地名がついていた。そこに広がる棚田には、何万ものカエルが住んでいる。 クレーターに響き渡るカエルの声は、全体としておおきなうねりを感じることがある。それでいて、ひとつひとつの音もクリアに聞こえる。夕方に始まるカエルのアンサンブルは、夜が更けるとともに盛り上がり、山の際がうっすらと色を変える頃、力の抜けたすべての音が、波にもまれた石のような丸みを帯びて響きはじめる。その響きの美しさに気づいたのが、暮らし始めて8年経った5月の早朝だった。

山間に暮らし続けていると、だんだんと聞こえる音や見える風景がある。 感覚の解像度が急激に増す時期がある。そのことは自分の踊りにも影響を与えた。 ちょうど、たんぽぽの家で始めた障がいある人たちとのダンスが深まってくる時期とも重なっていた。棚田の水が田から田へと流れ始めるように、いろんなものがつながり始めた。異文化の中にどっぷり浸かって、伝統舞踊を習う体験をしたことが、障がいある人とダンスをすることにつながっていると思う。 ある風土や文化が芸能を生み出す。芸能が人々の思想や体を作り出す。両者は剥がすことができないが、その素晴らしい体を伴った知恵を、もっといろんな文化のいろんな体の人と 吸収できないか思う。 伝統芸能が想定していなかったような今の 社会で、そのまま再現するだけでは足りない。 舞踊も多様な体を対象とはしていないことがほとんどだ。だから芸能の何が大切なのかを見極めて、自分たちに合うように工夫する必要がある。芸能から力をもらうために、私たちの芸能を作りたい。簡単なことではない。それでも、そのしっぽをしっぽの無いカエルに見つけつつあるような気がしている。棚田を舞台に、どんな舞踊劇が生まれるだろうか。

 


共創の舞踊劇

 

この舞踊劇は、障害のある人、ない人、社会的課題をかかえた人たちがダンサーとともに既存の身体表現の枠組みを超えた舞台をつくることで、多様な表現のあり方を社会に問うことを目指す取り組みです。この作品をとおして人間の存在の幅広さ、奥深さ、そして人間を含むあらゆる自然と生命の声に耳を澄ませる機会をつくります。

ダンスには、異なる価値観を許容し、言葉を超えて交信する力があります。日頃聞き取れない微弱なサインが、その声の主たちと共に創りあげるダンスによって増幅され、これまでより多くの人たちに届き響きあうことでしょう。

この作品には、インドネシアの文化や芸能のエッセンスが取り入れられています。人と自然、人とおおいなる存在が行き交う世界観を持った芸能のあり方は、人間が培ってきた「共創」のかたちそのものと言えます。今日の私たちの 文化と、異なる文化がぶつかることから、いま、ここでこそ共感する表現をうみだすことを探ります。

この「共創の舞踊劇」で見つけた手法や過程を応用、共有することで、さまざまな背景を持つ人や芸術文化活動への参加が難しかった人たちの表現手段をさらにひろげ、共に生きる社会づくりにつなげること を目指します。


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